身分証明や会員登録なしでオンラインカジノへの入金や送金ができる「スモウペイ」は、新規の決算手段としてその利便性などがオンカジのプレイヤーの間で話題となっていた。
だが、そのスモウペイの「話題性」は、現在では「オンラインカジノでの利便性」ではなく、「スモウペイ運営業者の逮捕」のほうへと移りつつある。
2023年の夏以降、オンラインカジノの違法性に対する警視庁の対応が以前に比べてはるかに厳しくなってきているのは、オンラインカジノに関わる人間には周知の事実であるだろう。
オンラインカジノについて詳しく書かれているサイトなんかにも、注意喚起としてオンラインカジノが賭博であることが書かれている。
記憶に新しいところでは、賭博行為を生配信した罪でyoutuberが逮捕された事件が挙げられるが、この事件をきっかけに、これまでは「グレーゾーン」として扱われていたオンラインカジノが、すでに「レッドゾーン」に突入していたことを多くの人が知ることになった。
オンラインカジノの決済サービス、スモウペイの運営業者2名の逮捕は、この「レッドゾーン」に突入したオンラインカジノの現状をさらに証明するような逮捕案件であると考えていいだろう。
決済業者の逮捕から見えてくるオンラインカジノの今後
スモウペイの運営業者は、オンラインカジノの決済業者の検挙としては初であるが、この「決済業者の逮捕」から見えてくるのは、今後のオンラインカジノの違法性に対するさらなる追求である。
オンラインカジノが明らかに違法でありながら「グレーゾーン」として扱われていたのは、オンラインカジノの「海外業者」に対しては、国内の賭博法で取り締まれなかったことに起因している。
国内の賭博法で取り締まることが可能だったのは「オンラインカジノの利用者(賭博者)」だけであり、「胴元でもなくプレイヤーでもない」という曖昧な位置にいる「オンラインカジノの利用をあっせんする中間的な存在」の取り締まりは見送られていた。
今回のスモウペイの運営業者の逮捕は、この「オンラインカジノの利用をあっせんする(協力する)中間的業者」の逮捕であるところが、これまでのオンラインカジノ関連の逮捕者とは決定的に違っている。
「常習賭博」に対する「幇助」によって逮捕された今回のスモウペイのケースは「賭博法」ではなく、刑法第62条の「幇助」での逮捕であり、「主犯」としてではなくて「共犯」の枠で検挙の対象になった初めてのケースだ。
考えてみれば、これまで警視庁がオンラインカジノの取り締まりにおいてこの「幇助」に眼をつけていなかったことが不思議に思われるほどである。
「刑法の死角をついている」ことでグレーゾーンだったオンラインカジノは、今後はむしろ「刑法から死角をつかれる立場」へと一転し、法的に追い詰められていくことが予想される。
幇助による中間層の摘発によって期待される効果
今回のスモウペイ運営業者の逮捕のような「幇助」による逮捕が、オンラインカジノに与える打撃は、戦争で言うならば「補給線の断絶」に近い効果を持つことになるだろう。
日本国内のユーザーがオンラインカジノで遊ぶためには、オンラインカジノに入金と出金をするスモウペイのような決済業者の存在が必要であり、この中間的な業者の存在ナシでは、海外業者は「日本国」に住むプレイヤーから金をとることができなくなる。
日本国内の賭博法では、海外に胴元がいるオンラインカジノの本丸を叩くことはできないが、本丸を兵糧攻めするように、日本国内で利用できる決済業者を叩いてしまえば、断絶は無理でも、オンラインカジノの国内撤退に繋がるような「違法運営の縮小化」は期待できる。
スモウペイの運営が逮捕されたことによって、これまで「オンラインカジノの海外業者」から金をもらう形で「あっせん」や「仲介」をしていた日本国内の関係者たちの立場には暗雲が立ち込めることになった。
スモウペイという決済業者の「幇助」による検挙によって見えてくるのは「オンラインカジノというグレーゾーンビジネス」の終焉である。
今回のスモウペイの逮捕は、オンラインカジノが現在「おわりのはじまり」にあることを象徴するような事件であった、と後々回顧されることになるのは間違いないだろう。